2008年12月06日

「暴走する資本主義」を読んだ

暴走する資本主義を読んだ。

技術革新などで資本主義が過度にいきすぎてしまい、民主主義が危機的な状況になってきている。それらの関係を明確化して問題点を明らかにし、解決策を提案している。

1970年代から、技術の革新などによって企業間の競争が激化してしまい、投資家の立場として企業に高いリターンを求め、消費者の立場として企業に安い商品や良いサービスを求めるようになった(投資信託、ファンド、ウォールマートなどの大規模小売業)。一方、市民としての力が弱くなっており、民主主義が機能しなくなってきている。企業のCEOは、自らのルールに従って投資家や消費者の利益のために行動する立場であり、その結果として雇用が不安定になったり、外国の工場で劣悪な環境で働かせていたり、ということが発生するが、あくまで企業間の競争の結果としてCEOはやっているだけである。企業は競争に打ち勝つためにロビー活動に精を出すようになり、政治の世界が企業に支配されるようになっていて、市民のための政策という点ではどんどん弱くなってきている。

ある企業がこういう悪事に見えるようなことをやっているのを非難してやめさせても、他のライバル企業がやっている限りは、そのライバル企業のサービスが選択されて利益を上げていくことから、法律などによる規制という対応が必要となる。

などといったことを書いてあり、技術革新による競争激化と「投資家」や「消費者」の要求から資本主義が暴走する仕組みとなってきていることと、それによって「市民」としての力、民主主義の力が弱くなっていることの関連性を明確に述べていて非常に感心した。過去に格差拡大とか労働問題などの本を読むたびに、企業のやり方にあきれつつも、その企業のサービスを拒否するという選択肢がなかなかとれないことに矛盾を感じていたが、この本はそういった問題を明確に示していたと思う。

最近の金融危機もあってこの本が注目されていると考え、前から気になっていつつも未読だった状態だったものを読んでみたが、金融的に過度にレバレッジがかかってなんとかかんとか、といった内容の本ではなかった。

この本のあとがきにも書いてあるとおり、ロビー活動なんとかという記述は確かに日本ではピンとこないかもしれないが、消費者として安くて良いものを過度に求める、といったところは日本にも共通することであり、納得しながら読むことができた。

この超資本主義(Supercapitalism)から民主主義を取り戻すためには、やはり個々の企業に対する非難や不買運動などではなく、法制化された規制などが必要という著者の提案には共感できる。ただし、グローバル化された現代社会では、一国だけでこういう規制を設けても意味がないのではないかと思うし、だからといって世界レベルで規制を設けることが可能かと言われると無理だと思う。結局はこの流れをずっと突き進むしか道がないのかと考えると頭が痛いところだ。

また、個人的には、これまで悪事を働いているとされている企業のサービスはなるだけ利用しないほうがよいと考えていたけど、個人レベルでそういう活動をやるのは意味がないというのを認識させられた。個人として何をやれるか、ということを考えると、自分の無力さを感じずにはいられない。自分だけがよい方向となるような視点であればやるべきことはあるのだけど。規制に守られた競争の激しくない業界の正社員となることなどはいいでしょうね。そういう既得権益を持っている人は必死にしがみついたほうがよさそう。

技術革新や競争の激化によって、インフレが過度に進まなくなるというのをグリーンスパンが早期に見抜いていたのでは、といった記述があったが、日本でここ十年の間に起きたデフレについても全く同じ仕組みだったんだということを改めて認識できた。(GDPの算出方法に問題があるという考え方もあるけど。)

他に、企業のCSRといったものは、その企業にとってなんらかのメリットがあるからやっているのであり、メリットがないものについては株主に対する説明がつかない以上はやるべきではない、という記述もあり、確かに批判を受けそうな記述ではあるが、真実を述べていて納得のいく記述だと感じた。企業が発するメッセージでどうみてもこじつけにしか思えないようなものでもCSRに分類されており、それを真に受けているのかどうかしらないけどSRIファンドなどがその企業の株を買っているのはアホくさい。(SRIファンドの組み入れ株式を見ると、大企業を対象としたポートフォリオそのもの、ということがある。)

CEOの収入が高騰している話題にも触れられており、スポーツ選手でトップクラスの選手の給与が高いのと同じ論理であるという説明は自分が考えていたものと同じであり、納得のいくものであった。ただ、投資家からの評価として非常に短期間での評価となっているのが問題というのは感じていて、まさに最近の金融危機はこれが原因の一つだと思う。日本企業はCEOが過度に高い収入を得るという傾向はまだ小さいが、そのために能力の高い人物がCEOにならないために企業の利益が高まらないのは問題だと思う。どっちもどっちで難しい問題ですね。

著者のロバート・B・ライシュは、アメリカ民主党で重要な立場であるらしく、この本の内容が今後のオバマ政権に対してどういう影響を与えるかというのは気になります。

なんかとりとめのない記述になってしまった。現在の資本主義の暴走と民主主義の衰退を非常によく説明した本として読む価値は十分にあると思う。事例の記述が多いので、アメリカ企業に関する知識をある程度持っていないと読み進めるのはきついと思う。
posted by mako at 10:40| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(ビジネス本・その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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